琵琶歌

琵琶歌「春の宴」源氏物語「胡蝶の巻」より

薩摩琵琶ビタン(Kumiko)

薩摩琵琶鶴田流水島結子門下豪徳寺稽古場を運営。 琵琶歌にまつわる各地を訪問中。 伝統芸能としての薩摩琵琶を大切にしながら、 他ジャンルや楽器とのセッションにも挑戦。

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琵琶歌「春の宴」は、紫の上の住む御殿でおこなわれた、雅な宴の様子を歌っています(^^)
紫の上は、光源氏が最も愛した女性として源氏物語に描かれています。
このブログでは、琵琶歌「春の宴」の内容を、「胡蝶の巻」現代語訳から抜粋させて頂きました。

三月二十日あまりの頃 紫の上の御殿の御有様
 匂い尽くして咲き出でし 花の色
 鳥の声さえうっとりと 今たけなわの春景色

(薩摩琵琶鶴田流「春の宴」の一節より)

(松岡映丘_みぐしあげ(1926))

源氏物語「胡蝶」(こちょう)第24帖

源氏の君36歳、紫上28歳、玉鬘22歳、夕霧15歳の頃の物語

三月二十日過ぎの頃、六条院 春の御殿のお庭は、例年より特に手を尽くされましたので、美しい花々が咲き乱れ、鳥のさえずりが聞こえて、誠に素晴らしい様子でございました。

源氏の君は、唐風に仕立てた舟を急いで造らせなさいました。初めて舟を池に浮かべる日には、雅楽寮の楽人たちをお呼びになり、舟楽をお楽しみになりました。親王たちや上達部などが、多数参上なさいました。

舟は竜頭鷁首で唐風の装飾に仰々しく飾り立て、舵取りの棹をさす童も皆、髪を角髪に結って唐土風に設えて、その大きな池に漕ぎだしましたので、このような舟楽を見慣れない女房などは、まるで見知らぬ国に来たような心地がして、大層素晴らしいと興味深く思っておりました。

春の池や井手の川瀬にかよふらん 岸の山吹そこもにほへり

    (訳)春の殿の池は、井手の川瀬に通じているのでしょうか。
       岸の山吹が川底にも美しく咲いているように見えます。

取り留めのない和歌などを詠み交わしながら、舟は行く先も帰る里も忘れてしまいそうで、若い女房たちが心を奪われるのも、無理もないほど美しい水面の風景でございました。

 日が暮れかかる頃、「皇じょう」という雅楽が美しく聞こえる中を、思いがけず中宮づきの女房たちが、釣殿にさし寄せられて舟を降りました。ここの調度は大層簡素で優雅なものでした。

夜になりましたが、まだ大層物足りない心地がしましたので、御前の庭に篝火を灯し、階の元の苔の上に楽人を控えさせて、上達部や親王たちが皆、弦楽器や管楽器などを各々奏しなさいました。師匠格の特に優れている楽人だけが双調を吹いて、階上で待っていた楽人たちが、琴の調べを大層華やかに掻き鳴らしました。

だんだんと調子も唐風から和風に変わって、「喜春楽」が奏されました。

やさしい現代語訳「源氏物語」 http://wakogenji.o.oo7.jp/24kotyou/24kotyou1.html より引用

源氏の君は かねて造らせおかれたる 龍頭鷁首の船を唐風に飾らせ 物々しゅうしつらえ給い
舵を取り棹をさす童には 皆みづらを結わせて 唐子の様に装わせ
広木池の中へ 漕ぎ出させ給う

 春の池や 井出の川瀬に通うらん 岸の山吹 底も匂える

暮れかかる頃 皆々心ならずも 釣り殿に舟をこぎ寄せ 陸に上がる
間もなく夜となれば お前の庭に かがり火を灯し 御階の下の苔の上に 楽人を召し
上達部も親王たちも 糸竹の弾き物 吹き物 とりどりに また物の師共も 殊に優れし者ばかり
堂上それを受け取って おん琴などいと華やかに弾き給う

遊び明かし 歌い明かし
呂の調べが律の調べに移り 歌うて尽きぬ夢心地
春の宴の 夜もすがら

(薩摩琵琶鶴田流「春の宴」の一部より)  

琵琶歌「春の宴」は、このような「源氏物語」の世界を忠実に再現した曲なんです。
薩摩琵琶で雅な宴の様子を奏でられるなんて、素敵ですね(^^)
私も弾いてみました♪

光源氏の理想の女性、紫の上

光源氏は紫の上を理想の女性として崇めています。彼女の美しさや高貴な姿は、彼の心を射止めました。紫の上は光源氏にとって特別な存在であり、その内面に秘められた複雑な思いは物語の中で繊細に描かれています。

なお、「胡蝶の巻」の胡蝶の由来は、中宮による季の御読経が催された際に、紫の上が美々しく装った童たちに持たせた供養の花を贈り、中宮とかわした和歌に因みます。

(松岡映丘春光春衣(1917)

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